被保険者の年齢や居住地、車の主な利用シーン、走行距離など、あらゆる条件によって保険料が左右される自動車保険。
車の「型式」による保険料への影響も存在することをご存じでしたか?
「型式別料率クラス」では、車両の型式別の事故リスクを算出し、車ごとに保険料率のランク付けをしています。
今回は料率クラスの決まり方や、どんな車が保険料に影響しやすくなるのかなど、型式別料率クラスの特徴について解説します。
型式別料率クラスとは?
型式別料率クラスとは、車の型式ごとの事故発生率やユーザー層といったデータに基づいて算出する“保険料率区分”のことを指します。
より公平に保険料を算出するため、それぞれのリスクの差異に応じたものになるよう、“車種”ではなく、“型式”別に保険料率が定められているのが特徴です。
例えばOEM車(※)のように安全性能などまったく同じ車であっても、ユーザー層の違いによるリスクの差異が見受けられた場合は、メーカーごとに料率クラスが異なる可能性もあります。
なお参考純率の算出は、「損害保険料率算出機構(通称:損保料率機構)」が行っています。
(※)他社が開発した車を自社ブランドとして取り扱われる車のこと。見た目も性能もまったく同じだが、メーカーや車種名、型式などが異なる。
料率クラスは全部で17段階
型式別料率クラスは1~17段階まで存在しています。(※2023年2月現在)
軽自動車は1~3の3段階、普通自動車は1~17の17段階に分かれており、数値が低いほど保険料が安くなり、数値が高いほど保険料が高くなるといった仕組みです。
2020年1月1日以前、軽自動車には料率クラスの設定はありませんでした。
しかし近年、軽自動車の普及により型式ごとのリスクの差が生じるようになったため、軽自動車にも料率クラスを設定することになったという背景があります。
さらに以前は「1~9段階」までだった料率クラスを、2020年1月1日以降は「1~17段階」に細分化。より正確に、公平な保険料を算出できるようになりました。

時代の変遷に伴い、より公平な保険料を算出するために、こうしたルールの改定も行われています。
料率クラスが適用される車・されない車
料率クラスが適用されるのは、「自家用普通乗用車」「自家用小型乗用車」「自家用軽四輪乗用車」の3種類のみです。
小型トラックやライトバンといった貨物車や、キャンピングカーのような特殊自動車などは「自家用」であっても料率クラスの適用外となっています。
型式別料率クラスの仕組み
続いて、型式別料率クラスの仕組みについて見ていきましょう。
型式別料率クラスでは、自動車保険の基本補償である4つの補償について、保険料率の設定がされています。
- 対人賠償責任保険
- 対物賠償責任保険
- 人身傷害保険
- 車両保険
損保料率機構の公式サイト内にある「型式別料率クラス検索」を活用すると、型式別の料率クラスを調べることができます。
参考までに、ボディタイプ別人気車種の型式別料率クラスを表にまとめたのでご覧ください。
ボディタイプ | コンパクトカー | SUV | セダン | ワンボックス |
車種/型式 | トヨタ ヤリス「MXPH15」 | トヨタ ライズ「A201A」 | トヨタ カローラ「ZWE215」 | アルファード「AGH35W」 |
対人 | 5 | 6 | 7 | 1 |
対物 | 6 | 7 | 7 | 6 |
人身傷害 | 7 | 7 | 9 | 5 |
車両 | 8 | 5 | 7 | 9 |
同じ型式でも補償別に見ると料率クラスに差が生じていることが分かります。
型式別料率クラスでは、主に前年度の事故発生率や保険料の支払い実績といったデータを元に保険料率を算出しています。
発売されたばかりの型式は保険データが蓄積されていないため、事故データではなく排気量や新車価格、発売年月などに基づき、料率クラスが決定されています。(※軽自動車の場合は一律クラス2からスタート)
さらに型式販売開始年月から3年以内の車には「ASV割引」や「初度登録後経過期間」を考慮した割引が適用されるなど、型式別料率クラスにはさまざまな仕組みがあるのです。
型式別料率クラスに影響する条件
型式別料率クラスを意識することで、保険料を少しでも抑えられたらありがたいですよね。
では、料率クラスに影響する特定の条件はあるのでしょうか?
一般的に以下に挙げるようなリスクが高い車は、型式別料率クラスに影響する可能性も高くなっています。
- 事故リスクが高い車種
- 盗難率が高い車種
- 修理費が高い車種
それぞれ見ていきましょう。
事故リスクが高い車種
実際に事故発生のデータを集めないことには事故率を算出できないため、“事故率が高い車種”を予測して特定するのは難しいでしょう。
しかし一例を挙げると、スポーツカーのようにスピードの出やすい車は、“事故リスクが高い”とみなされ料率クラスも高くなる傾向にあります。
また、事故率の高い60代以上の高齢者に人気の車種も、料率クラスに影響する可能性があるでしょう。
盗難率が高い車種
料率クラスを算出する際に見る「事故率」には、交通事故のみならず「盗難率」も含まれています。
車両本体の盗難や車上あらしなどに狙われやすい車は、料率クラスも高く設定されています。
以下は、日本損害保険協会の「自動車盗難事故実態調査 2021」にて発表された、盗難件数ワースト5位の車種です。
車種 | 件数 |
ランドクルーザー | 331件 |
プリウス | 266件 |
レクサスLX | 156件 |
アルファード | 138件 |
クラウン | 81件 |
毎年盗難事故の常連となっている「ランドクルーザー」の人気型式の料率クラスを見てみると、「対人:8、対物:8、人身:5、車両:17」でした。
料率クラスを意識して保険料を抑えたいのであれば、上記に挙げた車種は避けた方が良いかもしれません。
修理費が高い車種
万が一事故により車両の修理が必要になった場合、修理費用が高額になる可能性が高い車種は、車両保険の料率クラスも高くなる傾向にあります。
このように、保険料の支払いリスクが総じて高い傾向の車種は、料率クラスも高く設定されている可能性が大いに考えられます。
運転歴や居住地は料率クラスに影響しない
自動車保険では、被保険者の年齢や運転歴、居住地など、ドライバー属性によって保険料率が異なりますが、これらは料率クラスに直接影響しているわけではありません。
あくまでも料率クラスに反映されるのは「型式ごとの事故リスク」のみです。
型式別料率クラスによる保険料の差
型式別料率クラスは全部で17段階の料率に分かれていることを冒頭で解説しました。
保険料が最も安い「クラス1」と、保険料が最も高い「クラス17」を比較すると、保険料率の差は約4.3倍になっています。また各クラス間の保険料率の差は約1.1倍です。
1~3段階に区分されている軽自動車は、各クラス間の料率差が約1.1倍、クラス1とクラス3の差は約1.2倍に設定されています。
料率クラスによる保険料の差は、意外にも大きいことがいえるでしょう。
「新しい型式を選べば保険料は安くなるのか?」と気になる人がいるかもしれません。
一例として、2022年の乗用車販売台数ランキング3位の人気車種「日産 ノート」の型式別保険料を比較してみましょう。
上段「SNE13」と「HE12」が比較的新しい型式です。
古い型式の「NE11」「E11」と比較すると、車両保険のクラスの違いはひと目で分かるものの、対人・対物・人身傷害は、新旧による差が目に見えるわけではないということがお分かりいただけるかと思います。
それどころか料率クラスではなく保険料で比較すると、古い型式の方が安く済むことが明らかです。
車両保険金額は車の時価額までしか設定できないため、必然的に古い型式の車は車両保険金額が低くなっており、結果として保険料が抑えられています。
あくまでも一例ではあるので、他の車種ではまったく違う結果が出ることもあると思いますが、少なくとも「新車or中古車」が料率クラスに直接影響することは考えづらいでしょう。
型式別料率クラスはどのように決定している?
型式別料率クラスの参考純率の算出は、損保料率機構が実施しています。
型式別の事故率やユーザー層などのデータから総合的に判断して、型式ごとの料率クラスを振り当てているのが特徴です。
その他にも注目しておきたい、料率クラスの決まり方について、以下解説していきます。
料率クラスの見直しは1年ごと
損保料率機構の料率クラスの見直しは年1回、毎年1月に行われています。
「等級が上がって条件が良くなったはずなのに、翌年の保険料が上がった」というケースは、“料率クラスの見直し”が影響しているかもしれません。
損保料率機構では前年度の事故データから、その型式のリスク実態を調査します。調査の結果、現状のクラスが見合っていると判断された場合には料率の変更はありません。
現状のクラスと比較して、リスクが高いまたは低いとみなされた場合には、その度合いによって最大で「±2」のクラス移動があります。
突然「クラス5がクラス10になる」といった大幅な料率変更はないのでご安心ください。
(※発売後約3年が経過した新しい型式についてはリスクが低い場合のみ、-2以上のクラス移動の可能性があります)
最終的な料率クラスの決定権は保険会社ごと
損保料率機構が算出する料率クラスは、あくまでも全体的なデータから算出された参考純率です。
損保料率機構の会員になっている保険会社であれば、損保料率機構が算出した料率クラスを利用することができますが、必ずしも利用しなければいけないといったルールはありません。
つまり、最終的な料率クラスの決定権は保険会社ごとに異なるのです。
料率クラスが気になるときは、どんなルールに沿っているのか?保険会社や保険代理店から直接説明を聞くことをおすすめします。
料率クラスの自主的な変更は不可
料率クラスは最終的に保険会社側が決定する項目のため、型式が異なる車種に乗り換えない限り、自分の意思で料率クラスを変更することはできません。
年1回の料率クラスの見直しに伴い、次年度以降の保険料が変わる可能性は十分に考えられます。しかし保険料の増減を事前に判断するのは難しく、料率クラスをコントロールすることも不可能です。
まとめ:料率クラスの最終決定は保険会社ごと
型式別料率クラスによる保険料への影響は大きいものといえるでしょう。
しかし、型式ごとの事故発生データに基づき毎年数値が見直されるため「この車種なら保険料が安い」というのは、一概に判断ができません。
また最終的には保険会社ごとに料率クラスが決定されているため、実際は損保料率機構で調べた料率クラスよりも高かったということがあるかもしれません。
料率クラスについて気になることがあれば、契約中の保険会社に問い合わせてみると良いでしょう。