「搭乗者傷害保険に入ろうと思っているけど、本当に必要?」
「人身傷害保険と似ているけど、何が違うんだろう?」
このように思うことはありませんか?
この記事では、搭乗者傷害保険の概要について解説します。
搭乗者傷害保険をよく理解しないまま契約してしまうと、補償内容が被ってしまう恐れがあります。その分、保険料を余計に払ってしまいかねません。
ぜひ最後までご覧いただき、適切な保険に加入し、無駄な保険料は削減しましょう。
搭乗者傷害保険とは
搭乗者傷害保険では、契約している車に乗るすべての搭乗者が対象です。死亡・後遺障害・医療保険金が受け取れます。
また、搭乗者傷害保険は、過失の割合によって保険金額が変わりません。過失の割合とは、自動車の事故において当事者の過失を「70:30」のように数字で表したもの。自動車の事故は、当事者たちの不注意によって起こります。当事者のどちらかだけに、全責任が降りかかることは非常に稀です。
対人賠償保険や対物賠償保険では、補償の対象がまったくの他人や他人の物に限られています。一方、搭乗者傷害保険は、契約している車に乗る全員が補償の対象である点が、最大の特徴です。
搭乗者傷害保険では保険金はいくら受け取れる?
搭乗者傷害保険では、もらえる保険金はケガの部位や程度によって異なります。
一般的に、治療が4日以内であれば「治療給付金」として、治療1回につき1万円の受け取りが可能です。5日以上の治療になれば「入院給付金」としてもらえる保険金が多くなります。ケガの部位や程度で金額が変わってきますが、目安としては以下の通りです。
- 打撲:約5万円
- 骨折:約20~35万円
- 切断:約15~60万円
切断でも、顔面であれば15万円ほどで、腕の切断はおよそ60万円と、大きく金額差があります。
人身傷害保険との違い
搭乗者傷害保険との違いについて、よく疑問に思われるのが、人身傷害保険。どちらも事故によって、契約者や搭乗者がケガもしくは死亡した場合に備える保険です。
搭乗者傷害保険と人身傷害保険の違いは、主に以下の通りです。
- 保険金の受け取り時期
- 支払いの仕組み
それぞれ解説します。
保険金の受け取り時期
人身傷害保険と搭乗者傷害保険の違いとして、まず保険金を受け取る時期が異なる点が挙げられます。
人身傷害保険の保険金の受け取りは、損害額が確定した後です。示談交渉を待つことなく補償が受けられます。
示談交渉とは、当事者同士の話し合いにより、裁判の外で法律上の紛争を解決しようとすること。交通事故の場合は一般的に、損害賠償は示談で解決します。
搭乗者傷害保険は、医師の診断で入院や通院が5日以上経った後に保険金が受け取れます。治療にお金がかかるので、一時的に医療費を補てんする意味合いがあります。
タイミングとしては、搭乗者傷害保険の方が早く受け取りが可能です。人身傷害保険は示談交渉の前に受け取れますが、搭乗者傷害保険よりも遅くなります。
支払いの仕組み
保険金の支払いの仕組みについても、人身傷害保険と搭乗者傷害保険で違いがあります。
人身傷害保険の保険金は、およそ3,000万円~1億円。場合によっては無制限のケースもあります。損害額の算定基準に基づいて、過失の割合にかかわらず、損害額の総額を給付。後遺障害があって介護が必要な状態となれば、保険金額の2倍までを上限に、損害額が支払われます。損害額は、治療費・葬祭費用・休業損害なども含んだ金額です。
休業損害とは、交通事故の被害者が働けない間の、収入の減少による損害です。主に、会社を休んだことにより、給与や賞与が支払われなかったケースが該当。休業損害は「1日当たりの損害額×休んだ日数」で計算します。
一方、搭乗者傷害保険では、定額が支払われます。ここでの「定額の支払い」とは、実際にかかった金額ではなく、あらかじめ症状や部位ごとに決められた金額が支払われる、という意味です。治療費・葬祭費用・休業損害は含みません。
搭乗者傷害保険では、事故から180日以内に限り、後遺障害が発生した場合も補償があります。後遺障害の等級に応じて保険金額の4~100%が受け取れます。死亡や後遺障害の保険金は、医療保険とは別枠で支給されます。
搭乗者傷害保険は、人身傷害保険の上乗せ的な位置づけです。より手厚い補償を受けたい方向けと覚えておきましょう。
補償の重複に注意
ここまでご覧になって「搭乗者傷害保険と人身傷害保険に加入しよう」と思っている方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、搭乗者傷害保険と人身傷害保険の両方に加入する場合は「補償の重複」に注意が必要です。
「補償の重複」とは、複数の保険に加入することによって、補償内容に重複が発生してしまうこと。重複することで、補償につながらない保険料を支払っている恐れがあります。重複を避けるために確認したいのは、補償の範囲。
人身傷害保険では「車外の補償」について重複の恐れがあります。「車外の補償」とは、歩行中や、他の車へ乗車している際にあった事故の補償です。特に、家族がすでに人身傷害保険を付帯した保険を契約している場合は要注意。「車外の補償」が2つ以上の保険で被ってしまいます。
対策としては、一方の保険を搭乗中のみの補償とすることで、重複を避けられます。また、人身傷害保険を契約していると、搭乗者傷害保険は非加入とする保険会社があります。中には、搭乗者傷害保険をもともと取り扱ってない保険会社も存在します。
補償の重複を避けるには、補償の重複が発生しない仕組みを取っている保険会社を選ぶのも手です。契約の際には、重複が発生していないか確認しましょう。
搭乗者傷害保険のメリット
ここまで、搭乗者傷害保険と人身傷害保険の違いを中心に解説しました。ここからは、搭乗者傷害保険のメリットを以下3つご紹介します。
- ケガの症状が分かったら、すぐに保険金を受け取れる
- 他の保険金を受け取ったか否かに影響されない
- 等級に影響しない
それぞれ解説します。
1.ケガの症状が分かったら、すぐに保険金を受け取れる
搭乗者傷害保険のメリット1つ目は、医師の診断が確定したら、すぐに保険金を受け取れること。
前述したように、治療にかかる日数によって、以下が給付されます。
- 治療給付金:治療が4日以内
- 入院給付金:治療が5日以上
お金の負担を減らして治療が受けられるのは、大きなメリットです。
2.他の保険金を受け取ったか否かに影響されない
搭乗者傷害保険のメリット2つ目は、他の保険金を受け取ったか否かに影響されない点。
たとえば、自賠責保険の保険金や、事故相手からの損害賠償金を受け取ったとします。保険によっては、他に保険金を受け取っていると補償が受けられない場合があります。しかし、搭乗者傷害保険は、他の保険金の受け取りや金額に左右されません。
前もって決められた金額が支払われるのは、安心できる点です。
3.等級に影響しない
搭乗者傷害保険のメリット3つ目は、等級に影響しない点。
搭乗者傷害保険のみを利用した場合は、ノーカウント事故になります。ノーカウント事故とは、ノンフリート等級制度において、事故件数として扱わない事故のことです。ノンフリート等級制度では、保険を利用した事故があると翌年の等級はダウン。同時に、保険料は値上がりします。そのため、賠償金額が少ない場合、保険を使わずに自分の貯金で賄うケースがあります。
しかし、搭乗者傷害保険は、利用してもノーカウント。「翌年からの保険料が上がってしまう」と心配する必要はありません。補償が受けられるのであれば、活用していきましょう。
搭乗者傷害保険のデメリット
搭乗者傷害保険のメリットをお伝えしましたが、ここからは、デメリットを以下2つ紹介します。
- 超過した分の医療費は自己負担
- 補償を付帯しすぎると、保険料が高くなる
それぞれ解説します。
1.超過した分の医療費は自己負担
搭乗者傷害保険のデメリット1つ目は、定額を超えた分の医療費は自己負担であること。
搭乗者傷害保険では、実際にかかった医療費に関係なく、決まった金額を受け取ります。医療費があまりかからなかった場合は、問題ありません。しかし、定額を超えてしまったら、その分は自己負担になります。
良くも悪くも、支給額が一定の搭乗者傷害保険。「医療費が高額になって負担が大きくなった場合はどうするか?」「他の保険でカバーできないか?」を考えてみましょう。
2.補償を付帯しすぎると、保険料が高くなる
搭乗者傷害保険のデメリット2つ目は、補償を付けすぎると保険料が高くなってしまう点。
不安になって補償を付帯しすぎれば、その分支払う保険料は高くなってしまいます。また、前述した補償の重複も発生しかねません。
自動車保険に限った話ではありませんが、充実した補償がある分、保険料の負担は膨らみます。本当に必要な補償なのか、検討してみましょう。
搭乗者傷害保険の補償の対象と対象外のケース
搭乗者傷害保険では、どんな事故でも補償が受けられるわけではありません。
具体的に、搭乗者傷害保険で補償の対象となるケース・対象外のケースをご紹介します。
補償の対象になるケースは、適切に乗車していた際に起こった事故の場合。具体的には、以下のようなケースです。
- シートベルトやチャイルドシートを使っていた場合
- 台風・洪水・高潮による被害が発生した場合
上記のケースでケガ・入院・障害が残った際には、搭乗者傷害保険が適用されます。
一方、補償の対象外になるケースは、主に不適切な乗り方をしていた場合。具体的には、以下が挙げられます。
- 無免許
- 定員オーバー
- 酒気帯び運転
- 荷台への乗車
- サンルーフや窓から手足を出している
他にも、車から降りた後の事故や、地震・噴火・津波による被害も対象外です。台風・洪水・高潮とは異なり、地震・噴火・津波に備えるには、地震保険や火災保険を契約する必要があります。
地震・噴火・津波が補償の対象外である理由は、適切な保険料を設定するのが難しいため。背景には、地震・噴火・津波は、起こる時期や頻度を予測することは困難であること、一度に大きな損害が発生することが挙げられます。
地震・噴火・津波に備えたいのであれば、保険会社によっては特約を付帯できます。契約している保険会社に確認してみましょう。
まとめ
この記事では、搭乗者傷害保険について、以下の内容を中心にお伝えしました。
- 搭乗者傷害保険は、契約している車に乗るすべての人が対象
- 保険金は、ケガの程度や部位によって異なるが、およそ5~60万円が受け取れる
- 人身傷害保険より、搭乗者傷害保険は、保険金の受け取り時期が早い
- 他の保険金の受け取りにかかわらず、受け取りが可能
- 搭乗者傷害保険を利用しても、等級に影響しない
- 医療費がどれだけかかっても、保険金は定額
搭乗者傷害保険は、人身傷害保険のプラスアルファとして捉えるとイメージしやすくなります。
他に加入している保険や、万が一への備えがどれほどできているのかによって、加入すべきか否かは変わります。加入する際は、保険料の金額や補償の重複に注意して、事故が起こってしまった場合に備えましょう。