「こどもを自転車保険に入れたいけど、どんな補償があるの?」
「自転車事故を起こした場合、自転車保険で医療費ってまかなえるの?」
今回は自転車保険の補償範囲や補償内容の詳細、自転車保険の種類を紹介していきます。
こどもの自転車保険を検討している方は、自転車保険を選ぶ際のヒントになりますので、ぜひ参考にしてください。
こどもの自転車事故が原因で高額損害賠償請求を受けることも
近年、こどもの自転車事故が原因で、高額損害賠償請求をされてしまうことが問題となっています。
実際にこどもが自転車事故を起こしてしまった結果、高額損害賠償請求された事例をいくつか紹介します。
年月・場所等 | 内容 | 賠償額 |
平成17年11月横浜地裁 歩行者との事故 | 夜間、無灯火の上、携帯電話を操作して片手運転の女子高校生(16歳)が、前方を歩行中の看護師女性(54歳)に追突。被害女性は手足に痺れが残って歩行困難になり失職した。 | 賠償額 5,000万円 |
平成19年7月東京地裁 歩行者との事故 | 中学生(15歳)が無灯火で歩道を走行中、歩行中の男性(62歳)と衝突。男性は転倒して頭部を強打し、死亡した。 | 賠償額 3,000万円 |
平成20年6月東京地裁 自転車同士 | 男子高校生が昼間、自転車横断帯の手前から車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員(24歳)と衝突。男性会社員に重大な障害(言語機能の喪失等後遺障害1級)が残った。 | 賠償額 9,266万円 |
平成25年7月神戸地裁 歩行者との事故 | 男子小学生(11歳)が夜間、帰宅途中にマウンテンバイクで坂道を20~30キロで爆走し、散歩中の女性(62歳)と正面衝突。意識不明の重傷を負わせた。(事故の原因が自転車の安全走行に対する児童への十分な指導をしていなかった保護者にあるとして、保護者に損害賠償を命じた。) | 賠償額 9,521万円 |
上記に挙げた事例を参考にすると、高額損害賠償請求をされたのは小学生から高校生までの幅広い年齢層のこどもです。
どの年齢層のこどもでも自転車を利用するのであれば事故を起こす可能性があり、このような高額な賠償額は当然保護者の大きな負担となります。
自転車保険義務化の流れが全国的に広まっている
自転車事故による高額損害賠償請求が問題視されていることから、全国的に「自転車保険義務化」の流れが広まっています。
<自転車保険義務化になっている都道府県>
参考:国土交通省 地方公共団体の条例の制定状況(令和4年4月1日現在)
宮城県、秋田県、山形県、福島県、栃木県、群馬県、 埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、長野県、 新潟県、静岡県、岐阜県、愛知県、三重県、福井県、 滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、香川県、 愛媛県、福岡県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県
<自転車保険努力義務になっている都道府県>
北海道、青森県、茨城県、富山県、和歌山県、鳥取県、 徳島県、高知県
※上記のほか、政令指定市では、岡山市において義務条例 を制定済み
このように、全国の地方自治体で自転車保険義務化が広まり、自転車保険の重要性が高まっています。
こどもが自転車を利用するなら万が一の自転車事故に備えて、自転車保険に加入するのが重要です。
自転車保険の「個人賠償責任補償」が高額損害賠償請求に備えられる
自転車保険には「個人賠償責任補償」という高額損害賠償請求に備えられる補償があります。
以下は実際に高額損害賠償請求で保険金が支払われた保険会社などの実績です。
保険会社等 | 内容 | 賠償額 |
損保ジャパン | 自転車運転中に歩行者に衝突した会社員(35歳)が⾃転⾞で買い物へ向かう途中、信号のない交差点で歩⾏者と衝突した。相⼿⽅が脊髄を損傷してしまい、後遺障害(第3級)を負った。 | 相手のケガに対する損害賠償金→約9,000万円(個人賠償責任特約で無制限の補償) |
一般社団法人全国PTA連合会 | 無灯火の自転車で歩道を走行中、後ろから人に追突し転倒させ、脳挫傷により要介護状態となり、死亡させた。 | 約8,791万円 |
個人賠償責任補償があれば、万が一の高額損害賠償請求に備えることができます。
参考:損保ジャパン
参考:一般社団法人全国PTA連合会
損害賠償金を支払うための個人賠償責任補償
普段の生活で事故を起こしてしまった場合、数千万円~3億円などの高額損害賠償請求に備えられるのが「個人賠償責任補償」です。
個人賠償責任補償は、事故の他にも
- お店の物を誤って落としてしまい、壊してしまった
- カフェで隣の人のパソコンにジュースをこぼして壊してしまった
- こどもの投げたボールが近所の家の窓ガラスを割ってしまった
などの損害賠償にも備えられます。
個人賠償責任補償で支払われる金額は、保険会社や保険の種類によって上限は違いますが、無制限の保険もあります。
自分のケガで医療費が生じた際の補償
交通事故を起こしてしまった際には、相手側だけではなく自分もケガをしているケースが多いでしょう。
自転車保険は自分がケガをしてしまった時の医療費の支払いにも備えられます。
保険会社や保険の種類によって金額は違いますが、入院や通院、手術となった場合に補償してくれる保険が多いです。
自転車事故を含む交通事故のみを対象にしたもの、その他の日常生活でのケガも含むものなど保険によってカバーできる範囲が違います。
本人のみ、家族全員など補償対象範囲はさまざま
補償対象が
- 契約者本人のみ
- 夫婦のみ
- 家族全員
などさまざまなので、どの補償対象が合うのか家族構成などを考慮した上で考えておく必要があります。
自転車保険でカバーするのが難しい範囲や補償内容
個人賠償責任補償は日常生活での損害賠償に備えるものですが、
- 同居の親族にケガなどをさせた場合
- 借りたものを壊した場合
- 故意にものを壊してしまった場合
などは個人賠償責任補償ではカバーできません。
また、保険や保険会社によって
- 補償は賠償責任のみ
- 自転車事故に起因するケガのみをカバーする
などの違いがあることも。
保険会社や保険の種類によって補償の内容に違いがあることを、しっかり確認する必要があります。
こどもの自転車事故に備えられる自転車保険の紹介
こどもが自転車事故を起こしてしまった時の備えとして、下記のような保険があります。
- 民間の保険会社
- 県民共済
- 全国高P連賠償責任補償制度
民間の保険会社
「自転車保険」のような名称で民間の保険会社が紹介しています。
- 個人賠償責任補償
- 傷害保険
がセットになっているので、加害者になってしまった際の損害賠償(個人賠償責任補償)
と自分がケガをしてしまった際の医療費(傷害保険)に備えられます。
相手側と自分の両方をカバーしてくれるので、万が一の事故に備えられて安心です。
県民共済
各都道府県の生命共済、傷害保障型共済、新型火災共済に加入している場合、個人賠償責任保険に加入できます。
保険料は月々140円ながら「保険金の上限は最高3億円」「補償対象は家族全員」としっかり高額賠償請求に備えられる補償金額です。
上記いずれかの共済保険に加入後、個人賠償責任保険も追加で加入できます。
全国高P連賠償責任補償制度
生徒やPTAの加害事故を補償する制度で、補償内容は加害事故のみです。
学校ごとに一括でまとめて申し込みます。
掛け金は年間400円で、保険金の支払限度額は1事故につき1億円です。
参考:一般社団法人全国PTA連合会 賠償責任補償制度のご案内
個人賠償責任補償特約
すでに加入している損害保険や、団体保険、クレジットカードなどに「個人賠償責任特約」の付帯が可能な場合があります。
また、加入済の保険や持っているクレジットカードに個人賠償責任特約がすでに付帯されているかもしれません。
自転車保険の加入を検討している場合、補償が重複しないよう加入済の保険や持っているクレジットカードの補償内容などの確認をおすすめします。
まとめ:万が一の事故に備えてこどものための自転車保険に加入しよう!
近年こどもの自転車事故による高額損害賠償請求が問題になっており、全国的に自転車保険義務化の流れが広がっています。
自転車保険義務化にともない、自転車保険に加入する人もさらに増えていくでしょう。
また、自転車保険は加害事故になった際には相手側だけでなく、自分がケガをしてしまった際にも備えることもできます。
保険会社や保険の種類によって、補償内容、補償金額、補償対象はさまざまです。
補償内容がすでに加入済みの保険と重複することもあるので、一度補償内容は確認しておくのがおすすめです。
家族構成や保険の内容を考え、自分たちに合った自転車保険を選ぶようにしましょう。